近年の技術進歩により、空撮や様々なシチュエーションでドローンを使用しているという話しを聞いた事があるのではないでしょうか。
聞きなじみがある言葉で知っているようでも「ドローンとは何?」と聞かれたときに、明確には答えにくいものです。
ここでは、ドローンの定義とラジコンとの違いやその活用方法などをご紹介します。
ドローンとは?
ドローンの一般的なイメージは、4つのプロペラで水平飛行する飛翔体という意見が多いでしょう。
ですが、実際はプロペラが6個のものもあり、メーカーによりその機体形状は異なります。
ドローンの名前の語源は?
ドローンという名称は、英語で「雄の蜂」という意味があります。
語源としては諸説ありますが、次の二つが有力な説です。
- 飛行時、蜂の羽音に似ている
- 飛行するときに、複数の羽で回転しながら飛ぶ風切り音が蜂の羽音に似ていることから由来しているといわれています
- 戦時中の訓練機の名称
- 第二次世界大戦時に、イギリス軍が射撃訓練用標的飛行機の名前を「クイーン・ビー(女王蜂)」と名付けており、その無線操縦飛行機がドローンの形状に似ている為に名付けられたといわれている。
どちらも蜂が語源なので、キーワードとして覚えておくと良いかも知れません。
ドローンの定義とは?
以前は、ドローンの定義を明確に定めるものがなく、軍事用として使用されていた無人の無線遠隔操作できる機体をそう呼んでいました。
その後ドローンの急激な普及により、様々なトラブルが発生した影響で、平成27年9月に航空法が一部改正され、平成27年12月10日からドローンやラジコン機等の無人航空機を飛行させる為の新ルール(航空法第11章)が新たに導入されました。
これにより、航空法ではドローンの定義として具体的に条件を提示しております。
航空法第11章の規制対象となる無人航空機は、「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(100g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。いわゆるドローン(マルチコプター)、ラジコン機、農薬散布用ヘリコプター等が該当します。
【参照】飛行ルール(航空法第11章)の対象となる機体(国土交通省)
分類上では、100g以上の機体のものを「無人航空機」と呼び、100g未満の機体は「模型航空機」と呼びます。
これがドローンであるという明確な定義はなく、機体の重量によりドローンも「無人航空機」や「模型航空機」の中の1カテゴリーになります。
航空法ではどちらも一定のルールがあり、規制の対象になるので基本的なルールを事前に確認して飛行させる必要があります。
ドローンとラジコンの違い
航空法でドローンとラジコンは共に100g以上であれば「無人航空機」という扱いになり、明確には分類されておりません。
では実際の性能面ではどうでしょうか?
ドローンとラジコンの性能の違い
ドローンとラジコンでは、機体を空に飛ばすという目的での性能差異はありませんが、大きな違いがあります。
それは、ドローンが「自律飛行ができる」という点です。
ドローンには機体の傾きを感知できるジャイロセンサーをはじめ、定位置にホバリングしたり、飛行開始位置に自動的に戻って来るようにするGPSなども搭載されています。
これにより、短期的に技術習得が可能で幅広い使い方ができます。
一方、ラジコンでは飛行するすべての操縦を自分でカバーする必要があります。
その為に、操作技術習得にはかなりの時間を要し、限られたシチュエーションでしか使用できないことが多くあります。
ドローンとヘリコプターは同じ?
ドローン同様にホバリングができる性能を有していますが、ドローンとヘリコプターでは機械的な制御構造が異なります。
ドローンの性能は前途のシステムですが、ヘリコプターはメインの横回転するローターと後部に付いている縦回転する小型の制御ローターで飛びます。
同じホバリング機能がありますが、ヘリコプターは都度ローターの角度を手動で調整して保持しますので安定感がまったく異なります。
法規制を守る
ドローンを飛行させるには航空法に従う必要があります。
次のような場所や状況で飛ばさないよう注意が必要です。
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地表、水面から150m以上の空域
地表や水面から150m以上の高さの空域を飛行させるには、事前の申請の前に当該空域を管轄する管制機関との調整も必要です。
空港、空港周辺の空域
空港はもちろんその周辺空域(空港によって異なり、6キロメートル以内〜24キロメートル以内にて設定あり)を飛行させる場合も許可が必要です。
国土交通省や関連空港事務局に許可申請します。
人口集中地区の上空
人口集中地区とは、5年毎に実施される国税調査の結果から産出される一定の基準を超えた地域のことです。
人口集中地区でドローンが故障し墜落などすると甚大な危険が発生する可能性があります。
原則としてこの地域での飛行は禁止されています。
緊急用務空域
警察、消防が緊急で緊急用務を行うための航空機の飛行が想定される場合に、無人航空機の飛行を原則禁止する空域を指定します。
その場所がホームページ・Twitterにて公示があると該当空域では飛行不可となります。
飛行ルールのチェックを忘れずに
ドローンを飛ばす場合の原則として、次のような飛行ルールを守る必要があります。
このルール外の飛行をする場合は、撮影許可と合わせて飛行承認申請を行う必要があります。
夜間飛行は許可制
国立天文台が地区別に発表する日の出から日の入りまでに飛行を終える必要があります。
地域別で時間が異なるので事前に確認が必要です。
撮影対象から30m以上の距離を保つ
安全の為に、樹木などの自然物以外の人や建物対象から30m以上の距離を離しての飛行が必要です。
目視可能範囲での飛行
ドローンを飛行させる操縦者が、目視で常時見える範囲で飛行させる必要があります。
イベント上空では飛行禁止
イベントや催し物撫がある時は人が多数集まる事が懸念されます。
このような場所ではドローンの故障など発生すると、事故につながる為に飛行は禁止されます。
危険物輸送禁止
引火する可能性のある火薬類や引火性のガスなどは危険物と見なされ輸送が禁止されます。
危険物を輸送していた場合は、テロや悪意ある操縦などと勘違いされる場合があるので輸送は冗談でもやめましょう。
ドローンから物を投下不可
ドローンからいかなる物も投下してはいけません。
投下する下に、人や物があると事故につながります。
しかし、投下ではなく、降下して置くことは規制対象ではありません。
ドローンの活用用途
元々、軍事目的で製造開発されてきたドローンですが、技術が進歩してより小型化・量産化が可能になったことで比較的安価になり、様々な分野での利用が増えてきました。
娯楽としてのドローン
一般的にドローンが市民権を獲得したのは、スマートフォンでの操作が可能になったカメラ搭載型ドローンが登場したことにあります。
今まで困難だった自撮りでの空撮が可能になったことや、より小型の屋内用トイドローンの登場により身近になりました。
中でも近年では、ドローンを用いたスポーツ競技としてドローンレースが国内外で開催されています。
その最速スピードは約150kmの速度を出す機体もあり、レース中の迫力ある飛行映像を見ることも出来ます
賞金総額も1億円を超えるような大会もあり人気を集めている注目競技です。
産業としてのドローン
ドローンには繊細な動きを可能にするセンサーが多数搭載しています。
これにより多くの企業が産業としての導入を検討するなど、注目されています。
農業分野
以前まではヘリコプター型無人航空機を使用しての農薬散布が一般的でした。
しかし、人為的操作なので、ある程度熟練した業者に要請する必要があったりと、その敷居は少し高いものでした。
現在では広大な土地も、GPSでルート指定し効率的に散布ができるようになり、メガファームでの使用も可能となり、ますます今後需要が増えると言われています。
測量調査、上空からの調査
山間部や空からの測量や建屋の老朽化などの調査は、従来有人のヘリコプターで行い、その費用も高額なものでした。
ドローンを活用し、3Dモデリングカメラでの撮影やサーモグラフィーによる温度を計れるカメラなどで撮影することで、以前の方法よりも精度の高い情報収集が可能になっています。
災害復旧
地震や土砂崩れなどが発生した際の現状把握は、危険を伴うと共に一刻を争うものです。
被害状況を短期間で把握するためや、インフラ設備の早期復旧を手助けする為に現在警察や消防などで本格稼働しています。
物資運搬
産業用の大型ドローンの登場で、物資を運ぶという選択肢が増えました。
現在では約30キロ以上の重量物資を運ぶ事も可能です。
これにより、クレーンやヘリでの作業が困難な地域への物資搬送ができるようになり飛躍的に利便性が増しました。
離島への医薬品や食糧の運搬実験も行われており実用化を待ち望む人が多い分野となっています。
エンターテインメント
今まで不可能だったスポーツ業界での迫力ある空撮中継や、映画やプロモーションビデオなどでドラマティックな演出を見せる映像にドローンが活用されています。
最近ではドローンにLEDを搭載して、複数の機体をコンピューター制御した演出などがイベントでも行われています。
将来性のあるドローン分野
今後最も伸びるであろうと言われているドローンを使用したサービスは、宅配業といわれております。
アメリカでは、小売り大手ウォルマートがすでに先行してドローンでの配送サービスを2020年から試験的に開始しており、2021年に正式サービスとして開始しております。
日本でもドローン配送のテストが始まる
日本発の実験として、ドローンと配送ロボットが連携した配送サービスを2021年12月1日東京都奥多摩町で日本郵便が実験を開始しております。
佐川急便に関しましては、2025年度中にドローンによる配送サービスを実用化する方針を明らかにしました。
ネット通販での物品購入が今後も加速すると考えられる中、配送する人材不足に取って代わるサービスとして注目の業界です。
ドローンの課題
身近になり活用シーンの幅広さが今後も期待できるドローンですが、課題点も多くあります。
プライバシー侵害のリスク
高性能カメラを搭載した機体での空からの撮影が容易になったことで、第三者の自宅の庭先や屋内が鮮明に映り込むケースが多くなりました。
そのままプライバシーに配慮せずに動画を配信することでのトラブルが多々発生しています。
落下による人身事故
2015年4月に、首相官邸屋上で発煙筒などを搭載したドローンが墜落した事件はまだ記憶に残っていると思います。
2019年では、福岡、千葉、北海道でドローンが人に衝突して死亡するいたましい事故が起きています。
操作ミスによる物損事故
毎年農薬散布中に操縦を誤り電線や電話線を切断するトラブルが多数報告されています。
熟練した作業者でも、風の影響などでミスを犯し大事故に繋がる問題を発生させてしまします。
ドローン関連の法整備
2020年6月20日より100g以上の無人航空機の登録が義務化されましたが、運用期間が浅いのでどのような問題が発生するかは未知数です。
危険なことが発生して対応するよりも、事前に抑止する法整備が急がれます。
安全に使用すると活用範囲の伸び代があるドローンですが、国土交通省に報告があった無人航空機のトラブル件数を見てみると、平成27年度12件だった件数が令和3年では139件と約11倍に膨れ上がっています。
まとめ
ドローンの定義や現在活用されている業界や今後注目されるドローンを用いたサービスをご紹介しました。
産業目的でのドローン使用が更に加速する事が考えられるので、安全に操縦を行えるパイロットとしての人材育成と、快適に飛行できる法改正と環境づくりが必要かもしれません。